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菅原 百佳 展 "Butterfly Effect"

2015.05.22 (Fri.) - 06.13 (Sat.)

オープニングパーティー 5月22日(金) 6:00-8:00pm

バタフライエフェクトとは、お互いに関連性の無いかのようにみえる些細な事柄が、徐々に大きな現象の引き金に繋がるという概念を表すために用いられる表現です。
本展示では、この理論が、菅原百佳の作家としてのコンセプトやフィロソフィー、また、各々モチーフが異なる独立した複数の作品を組み合わせるという独特の表現手法と呼応します。
彼女の作品は、記憶の欠片の集合体のように、一見ランダムにも見える時間と空間が、実際には密接に関係し合って存在しているということを暗示すると同時に、必然と偶然、虚構と現実について我々に問いを投げかけているようにも見えます。
菅原百佳は、紫陽花やシダ、川の流れなどの自然界にあるモチーフや、張り巡らされた電線といった日常の都市風景を描きます。複数のパネルの連鎖はアンサンブルを奏で、物語を紡ぎはじめます。
菅原百佳の使用する作品の素材は、作品自体の独創的な構図と一体化し観る者に、まるで霧がかった朝の海の情景、静かな通りの角に沈む夕陽の優美さを思い起こさせ同時に、6月のある日の雨がもたらす深い花の香りを彷彿させるかの様な、そんな新鮮な感覚を与えてくれます。
そこには、時や季節の流れをはじめとする万物を移ろいゆく諸行無常なものとして受け入れる彼女のフィロソフィーが存在するのです。

Gallery Art Composition

『ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず』方丈記 鴨長明 1155~1216
この世の一切のものは生滅流転して、とどまることなく常に変移してゆく。
移ろいゆく物事の「今」を留めようと描写してゆくが捉えたと思う瞬間に、ことごとく「今」は流れて行ってしまう。
描く事は、まるで実体のない不確かで曖昧な事象を追いかけているようだ。
ならば、其処に在ったであろう過去の痕跡や、これから起こるかもしれない未来を暗示する、不確かな虚構と事実の間に位置するものを表現してみたい。
春はあけぼの、夏は夜、秋の夕と、冬の雪、移ろう四季折々の中で、古くから日本に根付いた植物や、其処に集う生き物達に殉じながら制作し、人々の、遠い記憶や既視感を喚起することが出来ればと願う。
そんなフィクションの中でこそ、人々達と浮遊するリアリティーを共有し合えると考える。
生滅の内に漂う無常感を常に底辺にたたえ、在るものから無くなるもの、生も死も、自然との合一、自然への回帰へ繋がる。
この身も作品も、この世の円環の一部となるのだろう。

菅原百佳

Artist Profile:
菅原百佳

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